鮮魚加工とは|仕事内容・やりがいや業界の将来性について解説

鮮魚加工とは|仕事内容・やりがいや業界の将来性について解説

鮮魚加工とは、水産物を食用に処理する食産業です。

約2兆円規模の市場を持つこの産業は、日本の豊かな食文化を支える縁の下の力持ちとして長年発展してきました。

本記事では、鮮魚加工の仕事内容ややりがいと大変さ、業界の現状と将来性について徹底解説します。

鮮魚加工全体について知りたい方や実際にどんな仕事をするのか気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。

鮮魚加工とは

鮮魚加工とは

鮮魚加工とは、漁獲された水産物を食用として適した形に処理する作業のことです。生鮮水産物に物理的・化学的処理を加え、その価値や機能性を向上させる産業活動であり、この過程で作られた製品は「水産加工品」と呼ばれています。

以下では、鮮魚加工の食品例をまとめました。

日本の水産業において、鮮魚加工は生産から消費をつなぐ重要な役割を担っています。国内水産加工業の市場規模は約2兆円にも達し、水産業全体の付加価値創出の中核となっています。また、日本の豊かな食文化を支える基盤として、長い年月をかけて発展を遂げてきた伝統ある産業でもあります。

鮮魚加工の具体的な仕事内容

鮮魚加工の具体的な仕事内容

鮮魚加工の仕事は主に工場とスーパーなどの小売店舗で行われており、それぞれに特徴的な業務内容があります。

以下では、工場で働く場合と店舗やスーパーで働く場合の仕事内容を紹介します。

工場の場合

水産加工品のほとんどは、専門の水産加工工場で製造されています。工場によって工程に違いはありますが、一般的には以下のような流れで製造が行われます。

工程 内容
原料受け入れ 受け入れ鮮魚を入荷し、品質チェックを行う
下処理 魚体の洗浄、ウロコ取り、内臓除去などを行う
加工処理 二枚おろし、三枚おろしなどの基本的な捌き方で処理する
製品化 切り身、フィレ、刺身などに加工する
包装 商品を衛生的に包装し、ラベル付けを行う
出荷 品質検査後、適切な温度管理のもと出荷する

工場では魚を捌く際、二枚おろしや三枚おろし、刺身など決まった捌き方で効率的に処理をおこないます。

店舗・スーパーの場合

スーパーの鮮魚コーナーでは、鮮魚加工から店舗運営まで幅広い業務を担当します。具体的な仕事内容は、以下の通りです。

スーパーの鮮魚コーナーでは、「何人前で食べたいか」「どんな調理法で食べたいか」といったお客様の具体的なニーズに合わせて魚を捌くことも重要な仕事です。

鮮魚加工で働くことについて

鮮魚加工で働くことについて

鮮魚加工の仕事には、専門的な技術と知識が求められると同時に、独自のやりがいや課題も存在します。

具体的に解説しますので、一つひとつ理解を深めていきましょう。

鮮魚加工の仕事のやりがい

鮮魚加工の仕事には、多くの人が見落としがちなやりがいが存在します。日々の繰り返し作業を通じて確実に技術が向上していくことを実感できるのは、この仕事ならではの喜びです。

また、マダイやブリ、サバ、タラなど、さまざまな魚種の適切な捌き方の技術が自然と身に付くので、日頃の食生活に役立てられるのもポイントです。さらに、新鮮で品質の良い魚を見分ける確かな目利き能力が磨けるのも大きな魅力です。

一見すると単純な作業の繰り返しに思えるかもしれませんが、自分自身の生活にもプラスになるスキルや知識が着実に身に付いていくのは、鮮魚加工の仕事における大きなやりがいといえるでしょう。

鮮魚加工の仕事の大変さ

一方で、鮮魚加工の仕事には避けられない困難もあります。魚には独特の生臭さがあり、このにおいが作業場全体に漂うため、においに敏感な方にとっては非常に辛い環境となる可能性があります。

また、鮮魚の品質維持のため作業場は常に低温に保たれており、一日中冷たい環境で作業を続けることになるので、体調管理を怠ると風邪などを引きやすくなります。

さらに、現場では一日中同じような作業が繰り返されることが多く、魚の種類や加工方法によって若干の違いはあるものの、基本的には単純作業の連続となります。

そのため、変化に富んだ仕事を好む人や、単調な作業が苦手な人にとってはつらい仕事になるかもしれません。

鮮魚加工の平均年収

スーパーの鮮魚部門の平均年収は、約340.1万円です。比較として、スーパー店員(商品の補充や陳列、レジ打ち、店内清掃などが主な業務)の平均年収は約361万円となっています。
参考:バックヤード作業員(スーパー食品部門)|職業情報提供サイトjob tag

ただし、これらの数字は地域や店舗規模、勤続年数やスキルによって大きく異なるため、あくまで目安として考えるとよいでしょう。

求められる基本的なスキル

鮮魚加工においてもっとも基本的なスキルは、包丁技術です。魚種に適した捌き方や均一な切り身を作る技術などが求められます。

さらに、魚の鮮度を正しく見極める目利き能力も重要なポイントです。臭いや目の濁り、えらの色、身の弾力などさまざまな要素から判断する能力が必要とされます。

鮮魚加工業界の現状と将来性

最後に、鮮魚加工業界の現状と将来性について解説します。これまで解説したポイントとは別の視点から、鮮魚加工について理解を深めていきましょう。

鮮魚加工にも影響あり!水産業界の現状と課題

現在の水産業界は、深刻な課題に直面しています。地球温暖化の進行によって、海水温が上昇し、魚のエサとなる重要なプランクトンが減少している状況です。

この環境変化は漁業の不漁を招き、その影響は鮮魚加工業界にも直接波及しています。原料となる魚介類の安定確保が難しくなり、原材料調達コストが大幅に上昇する事態となっています。

こうした状況下で、水産加工業者は製品価格を値上げせざるを得なくなり、その結果として消費者の負担が増加しています。このような問題は、今後の鮮魚加工業界を継続させるうえでも大きな課題となっています。

鮮魚加工を支える鍵となる?水産業界の成長戦略

水産業では、漁業生産者、加工・流通業者、地方自治体などのさまざまな関係者が結集した地域コンソーシアムが主体となって、業界全体でのデジタル化を進めています。

たとえば、漁業を持続できるための仕組みづくりのために、リアルタイムで水揚量を把握できるシステム導入や科学的データに基づく精密な資源管理などが進められています。さらに、漁業だけでなく観光や教育などのさまざまな分野でもデジタル応用を促進しており、交流人口の増加と新たな経済価値創出が目指されています。

これらの取り組みを現場レベルで推進するために、「デジタル推進員」の育成も急務となっています。デジタルに強い人材を育成できれば、高齢化が進む漁業現場でも最新技術を導入しやすくなり、水産業全体のDX化を加速させる原動力となるでしょう。

まとめ

鮮魚加工は日本の食文化を支える重要な産業であり、工場やスーパーといったさまざまな場でおこなわれています。

仕事には、さまざまなやりがいがありますが、作業場は魚の匂いがキツくて寒さが厳しいなど、環境面における大変さもあります。

業界全体としては課題に直面していますが、日本の食文化の国際的な評価を活かした新たな展開も期待されています。水産業の仕事に就いているあらゆる方々の努力によって、鮮魚加工は今後も発展していくことでしょう。

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