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- 精肉加工とは?仕事内容・やりがい&大変さ・具体的な就職先について解説
「精肉加工の仕事って実際どんなもの?」
「食肉加工に興味をもっており、より理解を深めたい」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。精肉加工という言葉は知っているけれど、具体的な仕事内容ややりがい、平均年収などの全体像はわからない方も少なくないでしょう。
本記事では、精肉加工業界の概要や仕事内容、やりがい・大変さ、具体的な就職先などを解説します。精肉加工への理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
精肉加工と食肉加工という言葉を聞いたことがあっても、その違いを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。これらの言葉は似ていますが、実は指す工程が異なります。
精肉加工とは、主に食肉のブロックを消費者が購入しやすい形にカットしたりスライスやミンチにしたりする作業を指します。具体的には、スーパーマーケットのバックヤードで豚ロースのブロックをトンカツ用に切り分けるなど、私たちが日常的に目にする状態に肉を加工する工程です。
一方、食肉加工は、より広範囲の工程を含みます。家畜のと畜・解体から始まり、枝肉や部分肉にする作業、さらには加工食品にする工程までを手がけます。つまり、精肉加工は食肉加工の一部だと言えます。
このような違いを理解できれば、精肉加工業界の仕組みがより明確になるでしょう。
精肉加工工場では、大量の肉を効率的に処理するための専門的な作業が行われています。主な業務内容は以下のとおりです。
工場での精肉加工の中心となるのが、肉のカット作業です。大量のブロック肉や枝肉を、専用の機械または手作業でスライス、ダイスカットします。工場内では効率性を重視するため、多くの場合、担当者は特定のカット工程に特化し、専門的な技術を磨きながら作業を進めていきます。
一人が全工程を担当するのではなく、流れ作業で精度と効率を高めているのが特徴です。
単にカットするだけでなく、加工食品の製造も精肉加工工場の重要な業務です。ソーセージ、ベーコン、ハムなどの加工食品を、専用の製造ラインで大量生産します。
原料の配合、成形、加熱、冷却といった基本工程に加えて、味付けや燻煙など製品ごとの専門工程も担当します。各工程には厳格な品質管理基準があり、それに従って作業をおこなうことで、安全で美味しい食品の安定供給を支えています。
加工された肉製品は、適切に包装され出荷されます。カットされた精肉や完成した加工食品を、規定量に従って正確に計量し、トレーや袋に詰めます。包装機械を操作して、真空包装やガス置換包装など、製品の特性に合わせた包装方法を選択することも重要な技術です。製品ラベルの貼付や、最終的な箱詰め作業もおこない、出荷準備を整えます。
工場での精肉加工は、大量生産が基本となるので、一人ひとりが担当する工程は限られますが、その分だけ専門性と効率性が高い業務といえるでしょう。安定した品質の製品を大量に生産し、私たちの食生活を縁の下から支えている重要な仕事と言えます。
続いて、スーパーマーケットにおける精肉加工の仕事内容について解説します。
工場で働く場合と流れは大きく異なりますので、一つひとつ理解を深めていきましょう。
スーパーの精肉担当者は、店頭に並べる商品の発注も重要な仕事のひとつです。売上予測や在庫状況を分析し、必要な肉の種類、部位、量を適切に判断します。季節イベントや曜日による売れ行きの変動も考慮しながら、仕入れ先に発注するのも重要なポイントです。
また、過不足なく発注するためには、経験と的確な判断力が求められます。適切に発注することが、ロスを減らし利益を確保する重要な要素となるのです。
スーパーでは、専用の機械を使った加工もおこなわれます。例として、しゃぶしゃぶや焼肉用の肉を切るときは、スライサーを使用して肉を均一な厚さで薄切りにします。
また、ミンチ機を使って挽き肉を作ることも日常的な業務です。単純作業ではありながらも、粗挽き、細挽きなど用途に応じて調整しながら進めていきます。なお、機械のメンテナンスや洗浄も重要な業務のひとつであり、安全かつ衛生的な製品を提供するための基本となります。
包丁を使った手作業による精肉加工も、スーパーの精肉担当者の腕の見せどころです。ブロック肉をステーキや角切り、すき焼き用など、用途や部位に合わせて包丁で丁寧に切り分けます。
筋や余分な脂肪を取り除く整形作業もおこない、見た目にも美しく、食べやすい商品に仕上げていきます。部位ごとの特性を理解し、最適な形でカットするための技術と知識の両方が必要になる重要な仕事のひとつです。
単にカットするだけでなく、付加価値をつけた商品の加工もおこないます。二次加工の例として挙げられるのは、味付け肉やハンバーグ、とんかつ用などのお肉などです。
また、複数の部位を組み合わせたセット商品を製造し、顧客のニーズに応えることも重要な役割です。ケースバイケースでは、オリジナルレシピの開発などで店舗独自の商品づくりに関わることもあるので、創造性を発揮できる部分でもあります。
加工した商品を適切に販売するための業務も重要な仕事です。加工した肉をパック詰めし、重量を正確に計量した後、価格ラベルを貼ります。「この商品を買いたい」とお客様に思ってもらえるように、完成した商品を店頭のショーケースに見栄え良く陳列するのも重要なポイントです。
また、商品の鮮度管理と商品が売れるチャンスを逃さないように、常に在庫状況をチェックの上、整理することも欠かせません。タイムセールやお買い得品の設定など、販売戦略に関わる判断もおこなうことがあります。
食品を扱う現場として、衛生管理は最も重要な業務のひとつです。作業場、ミンチ機、包丁、まな板などを定期的に洗浄・消毒し、常に衛生的な環境を維持します。
現場では、食中毒などの事故を防ぐために厳格な基準に基づいた清掃が求められます。日常的な清掃に加え、定期的な大掃除や機器のメンテナンスもおこない、安全な食品を提供するための土台を整えていきます。
スーパーでの精肉加工は、工場に比べると一人が担当する業務範囲が広く、接客や販売促進なども含めた総合的なスキルが求められる仕事といえます。お客様の声を直接聞きながら商品作りができるというやりがいも感じられるでしょう。
精肉加工の仕事は、私たちの食生活を支える重要な役割を担っています。精肉加工の仕事に就職・転職するときの判断材料のひとつとして、仕事の特徴や待遇について詳しく見ていきましょう。
参考値として、精肉加工業界の平均年収は全国調べで約340.1万円です。(正社員の場合)
ただし、大手企業では平均年収が高めに設定されていることが多く、大手食肉メーカーでは400万円以上の年収が期待できるケースもあります。経験を積んで技術を身につければ、年収アップの可能性も広がります。特に専門店で高度な技術を持つ職人になれば、それに見合った待遇が得られることもあるでしょう。
参考:バックヤード作業員(スーパー食品部門)|職業情報提供サイトjob tag
精肉加工のやりがいは、お肉に関する知識やスキルを身につけられることです。一頭の肉からさまざまな部位を上手に切り分けて、自分の腕で価値を生み出す達成感も感じられます。
頑張って切り分けた肉をお客様が手に取ってもらえたとき、「お客様に”美味しそう”と思ってもらえた」という実感を得られるのも、この仕事の魅力といえるでしょう。
技術を磨けば磨くほど評価される仕事なので、腕一本で勝負できる世界でもあります。
精肉加工の大変さは、生肉特有の強いにおいが常にあり、慣れるまでに時間が必要な点です。また、作業の大半が立ち仕事なので、足腰への身体的負担がどうしても大きくなってしまいます。冷蔵環境下での作業は非常に寒く、体力に自信がないと厳しい面もあります。
さらに、包丁などの刃物を扱うので、常に怪我のリスクと隣り合わせであり、集中力も必要です。
精肉加工の仕事に就職・転職するときに役立つ資格のひとつは、「食品衛生責任者」です。
2020年の食品衛生法改正によって、飲食店や食品販売業など食品を取り扱うすべての営業施設に「食品衛生責任者」の資格を持つ人を1名置くことが義務化されました。「食品衛生責任者」は、衛生管理の徹底や法令遵守の監督という重要な役割を担っています。
精肉加工の仕事をするうえで必須の資格ではありませんが、持っていれば資格取得の意欲をアピールしやすいので、将来的に現場責任者などになれるチャンスが広がるかもしれません。
「食品衛生責任者」の資格を得るには、食品衛生責任者養成講習を受講後、保健所に申請すれば認定されます。医師や歯科医師、薬剤師、獣医師や医学・歯学・薬学などの関連分野を大学で修めた方は講習受講が免除されます。また、規定の講習を受講し、修了すれば資格取得となるので、合格率はほぼ100%と言われています。
なお、以下のような食品関連の仕事に就いている方も受講が免状される可能性があります。
講習自体は一日程度で修了証が発行されるので、取得難易度は比較的低く、食肉加工業に携わる際の基本的な資格として広く認識されています。
続いて、精肉加工業に関連する就職先を解説します。
それぞれの特徴を理解し、自分のキャリアプランや適性に合った選択をすることが大切です。
詳しくみていきましょう。
肉用牛農家は、質の高い食肉を消費者に届けるために非常に重要な役割があります。彼らがいるからこそ、私たちの食卓には美味しい肉が届けられるといっても過言ではありません。
なお、精肉店と肉用牛農家は、肉の供給と品質向上の面において密接に関係しています。具体的には、肉用牛農家が食事や生育環境を徹底的に管理して高品質な肉を生産する一方、精肉店は肉を加工・販売する役割を担います。
精肉店と肉用牛農家の連携によって、新鮮で安心な肉を提供でき、地域の食文化や経済の発展へとつながります。
流通業は、農場や食肉処理場から精肉店へと、お肉を素早く運ぶ大切な役割を担っています。
特に大切なのは、輸送中の温度管理です。お肉は適切な温度で運ばれないと、鮮度や安全性が損なわれてしまいます。現代の流通業者は、専用の冷蔵・冷凍設備を使って、お肉の品質を守りながら配送しています。
また、流通業者は出荷元の情報を正確に記録・管理することで、万一の問題発生時にも迅速に対応できる体制を整えています。これによって、精肉店はお客様に「いつ」「どこで」「どのように」生産されたお肉かを明確に把握できます。
いわば、精肉店が信頼できる流通業者と協力することで、年間を通じて安定した品質のお肉が私たちの食卓に並ぶことができます。
食品メーカーも、精肉加工の仕事に携わるうえでひとつの選択肢です。大手メーカーでいうと、「日本ハム株式会社」や「伊藤ハム」などが、精肉加工も手がけている代表的な企業です。
なお、企業規模にもよりますが、大手企業の場合は精肉加工以外にも、生産飼育から処理・加工、物流、販売までも一括で手がけている場合があります。そのため、就職先次第では、精肉加工以外の仕事にかかわるチャンスもあるかもしれません。
精肉専門店は、肉のプロフェッショナルとして高い専門性を発揮できる職場です。顧客との直接対話を通じて販売を行うため、接客を含めた総合的な仕事となります。
肉の専門的な知識や様々な調理法の提案能力、接客スキルが求められる、やりがいのある仕事です。
ただし、一般的には店舗数の減少傾向や少人数で運営をする方針なので、求人数は比較的少なめですが、技術を本格的に学びたい方には適しています。将来独立して自分の店を持つキャリアパスにもつなげられるので、職人として腕を磨きたい方には魅力的な選択肢でしょう。
地元の焼肉店やレストラン、定食屋さんといったさまざま飲食店も、精肉加工にかかわる仕事のひとつです。なお、飲食店と精肉店は非常に密接なつながりがあります。
飲食店は、お客様に美味しい料理を提供するために良質なお肉を求めています。しかし、精肉店の役割はただ単にお肉を届けるだけではありません。例えば、ハンバーグに最適な挽肉の配合を提案したり、ステーキ用に厚さを調整したりと、料理ごとに最適な形に加工する技術が重要です。
飲食店からは、「このカットだとお客様に好評だった」「この部位はどんな調理法が合うか」といった情報が精肉店に伝えられます。このような情報交換が、新しい肉料理の開発や地域の食文化を豊かにする原動力になっているのです。
精肉店と飲食店の信頼関係は、最終的にお客様の「おいしい!」という満足につながります。このような信頼関係があるからこそ、私たちは安心しておいしい肉料理を楽しめるのです。
最後に紹介する就職先は、スーパーマーケットや百貨店の精肉部門です。
主な仕事は、入荷した肉のカットや調理、パック詰め、店頭陳列などです。商品の陳列整理や見切り作業など、精肉以外の業務も含まれるので、総合的な販売スキルを身につけられます。
正社員、パート、アルバイトなどのさまざまな雇用形態の求人募集があるので、就職のチャンスが比較的多めなのも特徴です。大手チェーンであれば、福利厚生や研修制度が充実している場合も多く、長期的に安定したキャリアを築きたい方には適しているでしょう。
精肉加工の仕事は、日本の食文化を支える重要な役割を担っています。この仕事の魅力は、技術を磨けば磨くほど評価される点と、お客様の食生活を直接支えるやりがいを感じられる点にあります。
たしかに、生肉の匂いや作業部屋の気温が低い点、立ち仕事が多いといった大変さはありますが、それを上回る達成感と社会的意義があります。特に技術を身につければ、専門店での活躍や自分のお店を持つという道も開けてくるでしょう。
食の安全性や品質への関心が高まる現代社会において、精肉のプロフェッショナルの需要は今後も続いていくことが予想されます。一方で、機械化や効率化も進んでいるので、単純作業だけでなく、商品提案や顧客ニーズの理解など付加価値を生み出せる人材が求められています。